今日の目的地は雪国。雪国といえば新潟。新潟といえばガーラ湯沢。越後湯沢〜ガーラ湯沢間の新幹線の支線(厳密には上越線の支線だが)を乗り潰すべく横浜から湘南新宿ラインで高崎を目指すことにする。7時58分発籠原行きに乗る予定で自宅を出発したがかなりの早着。先ほど乗り換えた東神奈川駅で確認したところ、有楽町付近で発生した火災の影響により東海道線、京浜東北線、山手線が運転見合わせ中だという。但し駅員氏が言うには横須賀線は定刻通りなので湘南新宿ラインも大丈夫だろうとのこと。湘南新宿ラインまで止まってしまうとダイヤの薄い水上〜越後湯沢の接続が取れなくなってしまい最初から計画が破綻してしまうので取り敢えず一安心か。
目的の列車を待っているとアナウンスがホームに流れる。
「東海道線が運転を見合わせている都合で湘南新宿ラインは大幅に遅れます」
しかもこれ、我々が乗車予定の籠原行きが大遅延するだけで後続は定刻通りとか・・・。CIAかモサドか、はたまたMI6か、いずれにしても我々の行く手を遮るべく諜報機関の仕業だろう。冗談はともかくまるで謀ったかのような仕打ちだがこれが遅れるとマズイ、ひじょ〜にマズイ。高崎線の途中駅で数分後にやって来る高崎行きの快速列車に乗り換える予定になっているからだ。快速列車に間に合わなくなると高崎〜水上の接続が断たれ結果水上〜越後湯沢の接続も成立しなくなってしまう。振替を行っている京浜急行も一瞬脳裏に浮かぶ。が、乗り換えと品川から先に時間がかかることを考えれば現実的ではない。取り敢えず横須賀線で東京まで出ればその移動中に山手線か京浜東北線が復旧してくれるだろう、なんの根拠もないが。8時30迄になんとか上野に着けば快速高崎行きに乗ることが可能だ。というわけで時刻通りにやってきた7時49分の千葉行きに乗り込んだ。


■■■■1月3日■■■■



上野駅

大宮駅

車内放送によると東海道新幹線も運転見合わせ中だという。そんな中、品川以降の地下化が功を奏し定刻通りで運転している横須賀線。これが動いていなかったら最初から詰んでいた可能性が高い。ビバ横須賀線!!
さて一息ついたところで今回のメンバーを紹介しよう。まずは我が家が集合住宅で二階がない反動からか、東アジア一ダブルデッカー(二階建て)車を愛する保育園児、次男坊。特技は瞬間的に消えること。現についさっきの横浜駅で遅れを確認するため20秒ほど電光掲示板に気を取られている隙に消えた。ホームを探してもおらず、父ちゃん顔面蒼白になって改札を覗いたところ半べそになって駅員氏に確保されているのを発見。見つけるまでの5分間、生きた心地がしなかったのは母ちゃんにナイショだ。翌日も軽く消えて寿命を縮めさせてくれたのはまた別のお話。そして私こと父ちゃんの以上二名!母ちゃんが参戦すればただの乗り潰しが豪華な飯を食えたり温泉宿に泊まれる家族旅行に化けるのだがサッカーの試合がある長男坊が参加不可のため自動的に母ちゃんも銃後を守ることになった。というか長男坊云々がなくても
「鈍行で新潟とか無理」
とか言われてどのみち参加はありえないが。
8時19分、東京着。夜のニュースで知ったがこの時点で有楽町のパチンコ屋はまだまだ派手に燃えていたそうだ。当然山手線も京浜東北線も復旧しておらず、いつも無駄に持ち歩いている時刻表をこの時持参していなかったことを悔やみながら車内でスマホを駆使して立てた代替案を実行することにする。
地下ホームから這い出て新幹線改札口へ。窓口で大宮までの乗車券と特急券を購入しついでに湘南新宿ラインのグリーン券を払い戻してもらう。次男坊から二階建て電車になぜ乗らないのかとクレームが付くがそもそもグリーン車なんていう贅沢なものは自分で稼いだ金で乗るべきもの。「富国強兵・臥薪嘗胆・欲しがりません、勝つまでは」の精神だ。ちと、いや全然関係ないか。とにかくそんなことを4歳児に説教しても仕方ないので
「帰りに乗るから」
と濁しておいた。
新幹線の切符を握りしめ20番線に駆け上がると8時32分発のたにがわ79号に間に合った。しかもMAX。北半球一ダブルデッカー車を愛する保育園児の次男坊、これ見て興奮度MAX!MAXとはこういう意味だったのか、と一人ツッコミを入れながら二階席へ。臨時列車だからか車内はガラガラ、スキー客もチラホラと。で、行き先はガーラ湯沢駅。このまま乗り通すことができれば84分後には目的地であるガーラ湯沢に到着してしまう現実を知って世の無常に目頭が熱くなった。
東京を出て25分後の57分に大宮着。接続時間が7分しかないため急ぎ乗り換えを実施し無事に計画通りの列車の乗客に。

上越線水上行き@高崎駅

大宮9時4分発快速アーバンで高崎線を北上。雲ひとつない晴天、熊谷を過ぎると畑や田んぼが広がり、その遥か向こうに山々が見える。秩父山地か?国内最大の平野なので当たり前だが関東平野は広い。列車に揺られていると日本にこんなに平らな所があるのかと思うほど広く感じる。車内に差し込む日差しが暖かく、ウツラウツラしつつ10時17分高崎に到着。
10時30分発上越線水上行き115系電車は既に入線しており各ドアの前には座席を虎視眈々と狙う18きっぷを操る猛者達の列が出来始めていた。終点まで約1時間、立ちっぱなしは少々辛い。我々も列に加わり車内清掃が終わり乗客扱いが始まると同時にボックス席を確保。意外と思ったよりも余裕で皆座れたのには拍子抜け。
高崎を定刻に出発して途中の新前橋、渋川で多くの乗客の入れ替わりがあり、いよいよ列車は山間部にかかる。水上の直前で今シーズン最初の積雪確認。日陰に僅かに積もっている程度ではあるが次男坊にすかさず発信。
「ワレユキヲ見ユ」
私も久々の雪にちょっと興奮。まるで気分はバルチック艦隊を発見した信濃丸の乗員だ。
「わー雪すごいね。積もってるよ」
フフ、こんなもので驚かれては困る。1時間後にはもっと凄い光景が待ってるぞ!

上越線水上駅にて長岡行き115系電車

水上で6分の接続で長岡行きに乗り換える。この列車、普段は4つ先の越後中里が始発だがスキーシーズンは水上発となりスキー客の便宜を図っているようだがどうみても18きっぱーの為に延長運転されているとしか思えない程鉄の乗客が多いヲタク御用達列車だ。先の水上行きから半減する編成のためイス取りゲームは熾烈を極め、水上に到着しドアが開いた瞬間に皆走る、走る。我々は約40分の乗車時間であるから、ま、別に座れなくてもいいか、くらいのスタンスでのんびりと跨線橋を渡り車内へ。幸いにも二人がけロングシート部分が空いていたので荷物を下ろし写真を撮りにホームへ出た。次男坊を立たせて115系をバックに撮影しようと試みたがなぜか写りたくないという。母ちゃんから「今どこ?」メールが来ていている都合もあり写メを送りたかったが頑なに拒否。
「なんで撮らないの?もしかして写真撮るとタマシイ抜かれちゃうとか思ってたりする?」
なんてやり取りをしていると見かねたのか車掌さんがシャッターを押してくれるという。結局次男坊を抱きかかえて撮ってもらった。発車間際にお手数をお掛けした車掌氏に改めて御礼申し上げたい。
11時41分、水上発車。

上越線長岡行き

土樽駅

水上から1つ目、湯檜曽駅に停まりその後列車は全長13500mの新清水トンネルに突入。途中のもぐら駅、土合で乗降客があったのには驚いた。土樽駅手前で地上に出ると明らかに群馬県側とは違う雪の量。次男坊はまるで初めて雪を見た東南アジアの人の様な騒ぎっぷり。

ミキ300−103

「トンネルの長い国境を越えると雪国だった」
川端康成の小説「雪国」の有名な一節を正に体感した一瞬。まぁ、越える前から実は雪は積もっていたわけだが・・・。現在、在来線でこの国境を越える機会は激減し鉄道利用ならば大多数が上越新幹線の世話になることになろうが、もちろん大清水トンネルでもトンネルを越えたら雪国現象を体感することにはできる。がしかし、浦佐の駅を出ると直ぐにトンネルに入ってしまい抜けるのは越後湯沢駅のほんのすぐ手前、その間地上の景色が拝めるのは極短い距離で「雪国」の世界を実感するには在来線ほど相応しいものはないと思うのは私だけだろうか?とにかく雪の白さが眩しい。

越後中里駅

列車は越後中里、岩原スキー場前と停車。ここまで来ると駅前がゲレンデ。何かもう乗り鉄しているのが馬鹿らしくも思える。
俺もスキーやりてぇぇぇ!!

越後湯沢駅@新幹線ホーム

越後湯沢〜ガーラ湯沢

突然ですが上越新幹線越後湯沢駅ホーム。越後湯沢12時17分着、同22分発ガーラ湯沢行きたにがわ407号に乗り換えてガーラ湯沢に25分着。5分の連絡でシャトルバスに乗り湯沢駅前に至るという慌ただしいスケジュールの為、写真を撮っている暇なし。ガーラ湯沢は駅構内からいきなりゲレンデに出られる素的な構造。駅前留学ならぬ駅前スキー。すごいぜ、ガーラ!

越後湯沢にて

なんやかんやで無事ガーラ湯沢からシャトルバスに乗って再び越後湯沢駅にカンバック。バスに乗らないと30分、雪道を歩いて戻らなければならないので非常に有難い存在だ。ちなみにシャトルバスはゲレンデを転々とするスキーヤーの為に無料で運行されているものだが、広い心を持って鉄ヲタも受け入れてくれるので乗り潰しの際は重宝するだろう。その際はホームページに運行ダイヤが載っているので確認の上利用されたい。
幼児は売るほど積もっている雪をなぜだか分からないが後生大事に抱えて歩くという習性を長男坊の時に発見した私は駅前で次男坊の装備をチェンジ。予め持参した長靴と手袋を装着し野に放つと案の定、雪の塊を拾い抱え込んでいた。

一本杉スキー場

せっかくの雪国、それもスキーヤーのメッカ越後湯沢まで延々4時間半掛けてやって来たワケでこのまま鉄活動を再開するのは惜しい。そこで駅から徒歩5分にある一本杉スキー場で雪遊び作戦を敢行することにした。時刻は間もなく13時になろうとしているところ、空腹も絶頂に達していることもあり場内にある食堂で昼食。その後はそのままゲレンデになだれ込む魂胆だ。

スキー場の食堂にて

ソリ専用コーナー有り

スキー場や海水浴場での食べ物は「高い・まずい・遅い」の三拍子を兼ね備えているのにどういう訳か「うまい」と感じるのは何故だろう?我々が注文した品も下界ではこの値段では絶対注文しないよな、というレベルにも拘わらず実際食べると非常にウマく感じる。
「ああ、これがいわゆるゲレンデ効果というやつか。ブスもゲレンデでは美人に見えると言うし、きっと同じことだな」
と、一人妙に納得。
どうでもいいが次男坊の前髪がガタガタなのは私がカットした際に彼がじっとしていなかったせいであり決して私に否はなく、また児童虐待ではないことを先に述べさせて頂く。
昼食後、次男坊に防水用のパラシュートパンツ(パラパン)を重ね着させていざ出陣!ソリを借りたついでに父ちゃんは長靴をレンタル。

積雪は110cm、天候晴れ!

この日の積雪は110cm。次男坊が引っ張っているのはかろうじて雪の上に先っぽだけ出した木だ。一生懸命抜こうとしていたが抜けるわけがない。その正体は全長1m以上の木である。

一本杉スキー場にて

ソリよりも雪の滑り台の方が楽しいようでひたすら雪山に登っては滑り、登っては滑りをループしていた。私は見張り兼撮影係り。快晴のお陰だろうか、風もなくじっとしていても案外寒くない。それにしても彼のはしゃぎっぷりが半端なく、夜中に熱でも出さなければ良いが・・・、と心配に。

一本杉スキー場

普段の人の入りがわからないので比べようもないが、この日は正月休み故家族連れでゲレンデは非常に賑わっていた。まさかこの中に巧妙に偽装された鉄ヲタが紛れているなどとは誰も気が付かないであろう。それくらい完璧に我々は雪遊びに興じる親子を装った。。一本杉スキー場はファミリーゲレンデと銘打っているくらいなので斜度が緩く子供にはうってつけだ。

かまくら?

横浜では積もるか積もらないかレベルの雪が降っても年2、3回程度、次男坊にとってこれだけ遊べる雪は人生初。こんなに堪能してくれると連れてきた甲斐がある。

一本杉スキー場より駅方面を望む

14時半、楽しい雪遊びもそろそろ終了の時間だ。次男坊に駅へ戻る旨伝えると
「最後にもう一回だけ滑る」
といい雪山の滑り台から滑り落ちる。最後の1回を3回繰り返しようやくゲレンデを後にした。帰宅後写真を見た長男坊が行きたがっていたので、春休みに家族でスキー旅行ができたら、と妄想が膨らむ。
5分で越後湯沢駅に戻り構内の売店でお土産を購入。15時5分の水上行きに乗車。混雑していて座れなかった上に途中で次男坊が寝て子泣き爺と化してしまった為抱っこする羽目に。いや、座ろうと思えば座れたかも知れない。座席に荷物を置いている輩がチラホラいて荷物をどかせばどれ位の人が席にあり得つけたか。見たところ旅行者の体ではなかったが、鉄ヲタには決してこのような非常識な振る舞いをする人はいないと信じたい。

水上行き普通列車@越後湯沢駅

水上駅

15時43分水上に到着。沢山の乗客が車内から吐き出され高崎行きに乗り換えるため一斉に跨線橋を渡る。跨線橋は一箇所のみで幅も狭く大渋滞。但し高崎行きは両数が倍増しほぼ全員座れると思われる。慌てる必要はないだろう。

高崎駅

高崎駅前

「終点だよ」
知らないお爺さんに声を掛けられハッとして起きると高崎駅。水上を出てからの記憶が全くないので発車して直ぐに寝てしまった模様。もちろん次男坊も爆睡。
時計は17時ちょうどを指していて既に夜の帳が下りている。高崎のホテルを予約してあるので本日の移動はこれまで。頑張れば帰宅出来ない時間でもないが明日のんびり帰りたい。ま、じゃらんで勝手に2000ポイント付与されていたのを有効利用するというセコイ目的もあるわけだが。
駅からホテルへの道すがら、ほぼ駅前の一角でイルミネーションが灯されていて思わず2人で見とれていた。クリスマスからやっているのだろうか?
徒歩10分少々、思ったよりも駅から遠く、ちょっと失敗したかな〜?駅前の東横インかワシントンホテルにしておけば良かったかな〜?と若干後悔の念を感じつつホテルルートイン高崎駅西口に投宿。一旦荷物を置き再び高崎駅方面に夕飯を食べに出掛けた。

高崎駅を出発するあけぼの号(前から)

部屋に戻り窓の外を覗くと直ぐ下はなんと線路!?駅も見えていて行き交う列車が良く分かる。しかも部屋は最上階だったため高架線の新幹線も丸見えだ。次男坊は椅子を引っ張ってきてそれに上がり窓に釘付け。これは嬉しい誤算、駅から遠いのはこれで帳消しだ。
これだけ眺めが良いとなるとすることは1つ!そう、寝台特急あけぼの号を見ることとである。春のダイヤ改正で廃止が決まってしまったあけぼの号、22時48分高崎駅発だと調べがついたので3分前にそっと部屋を抜け出し(次男坊は既に就寝)非常階段から今か今かと待っていると
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
機関車の独特の音を響かせ目の前を通過。写真も撮ってみたがただのコンデジで三脚もなく、ご覧のとおりなんだかよくわからない出来栄えだったが、それでも生あけぼのを見られて満足、満足!

高崎駅を出発するあけぼの号(後追い)

明日は結構のんびりと9時過ぎにチェックアウトする予定。あけぼの号のお陰で心地よく眠ることができた。



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