その1 その2 その3
2009年8月5〜8日
2009年夏 青春18きっぷの旅 中国地方編

今夏の青春18きっぷ(以下18きっぷ)の旅は中国地方のローカル線乗りつぶし。我が家から遠くなかなか足を延ばせない地域です。1月以上前から計画し、準備してきました。妻の夏休みとちょうど重なりましたが身重なため同行せず。ま、身重でなくても一日中列車に揺られる旅に一緒に行くとはいいませんが。というわけで5歳児の息子と二人で出かけてきました。

1日目(8月6日)
小田原→大垣

臨時化され車輌は373系から189系となったMLながら

名物の大垣ダッシュはほとんどなく平和なホーム
仕事を終え荷物を手に取り職場を後にする。妻も今日から夏期休暇。息子を連れて保土ヶ谷にある実家に戻っているので私も向かう。
妻の実家に到着すると息子が足の指を怪我したとかで病院で診察を受けたという。幸い既に出血は止まっていたが入浴は数日間は避けるようにとのことだ。毎日薬を塗りガーゼを交換しなければならないので義母が使いやすいようにと色々と小分けにしてくれた。旅先で切ったり貼ったりは大変なので有り難いことである。
夕飯と風呂を頂き21時半過ぎに出発。横須賀線の東戸塚駅まで行くバスがあるそうなので妻にバス停まで送ってもらった。これから数日間は父と二人っきりになるわけだが5歳ともなれば母との暫しの別れよりも旅行の方が楽しみと見え意外とあっさりとバスに乗り込む。
東戸塚から日付が変わる大磯までの乗車券を購入し横須賀線に乗ったがダイヤが乱れている様子。踏み切り内に進入者があり東海道線共々遅延が発生しているとのことである。大船で東海道線に乗り換えたがおおむね20分程度の遅れ。もともと運行本数が多いので遅れている分には20分前の列車がやってくるだけで大した影響はない。時間的にゆとりがあったので大船・藤沢・平塚で時間を調整しながら小田原至った。
小田原から0時31分発のムーンライトながら号(以下MLながら)に乗車。ここまでに息子は半分夢の中にいるような状態だったがこれでようやく落ち着ける。やはり眠かったらしく結局早暁大垣に着くまで一度も目を覚ますことはなかった。毎度MLながらでは寝付けず明けてからの日中に眠い思いをしている私からみると非常にうらやましい眠りっぷりである。
先のダイヤ改正で臨時化されたMLながら、停車駅もかなり減り、駅に着くたびに目が覚める私にとっては眠りやすくなった。静岡・浜松では其の都度起きずにはいられなかったがその後は気がつけば岐阜。名古屋停車時は夢中。今までに一番良く休めたMLながらであった。

大垣→米原→姫路

姫新線キハ127形
5時55分定刻に終点大垣着。5分の接続で東海道線姫路行きへ乗り換える。案の定着席できなかったが小田原から延々5時間半もMLながらの車中にいたので身体を伸ばすことができる30分は気分転換になって良いと思う。車中しっかりと眠れたようで息子は元気だ。
6時33分、JR東海と西日本の境界である米原に到着。新快速に乗り換えだが一斉に皆同じ列車に乗ることになるので混雑を避ける意味で一本後の新快速に乗車する予定になっている。が、夏休み期間とはいえ平日。後方の車輌はガラガラだったので6時38分発新快速姫路行きに腰を下ろした。後にこれが功を奏すことになるのだが・・・。
関西地区の楽しみはなんといっても新快速の走りっぷり。223系ファンの息子もこの列車に乗ることを楽しみにしている。定時に出発した新快速は彦根、能登川、近江八幡と停車を重ねるごとに混雑してきた。我々は夏休み気分満点での道中だが世間は普通の木曜日でこれから会社へと出勤する人達で車内は混みあう。夏休みで学生がほとんどいないのが救いだろうか。
前方踏み切りで遮断棒を折ってまで突破した悪質ドライバーのお陰で姫路には約30分の遅延。これから乗る姫新線は結局定時発だったので当初の予定通り一本後の新快速に乗っていたら置いてけぼりの憂き目にあったかも知れぬ。

姫路→播磨新宮→佐用→津山→新見

姫新線の車中にて

佐用駅

津山駅
10時12分発姫新線播磨新宮行き2両編成ディーゼルカーは僅かな接続時間で定刻に発車。さすがにお腹もすいてきた事なので先程乗り換え時に売店で購入したおにぎりを二人で頬張る。姫路を出ると暫く高架線を行くが右手に1979年に僅か8年で廃止された姫路市営モノレールの軌道跡が見えてきた。ぶつ切り状態だが未だ軌道が一部でも残っていることは驚きだ。50万人を超える県内第二の都市だけあり姫路出発時は立ち客が出るほど多いが高架を下りると田畑や住宅が点在し始め、駅に停車するごとに人は減っていく。30分少々で終点播磨新宮駅。ここまではおよそ1時間に1本くらいの運行がありそこそこ乗客もいるので姫路市のベッドタウンといったところか。
向かいのホームに停まっている佐用行きディーゼルカーは1両編成。ここでまとまった降客があったとはいえ2両から1両へと減ってしまうので車内は盛況だ。
3分の接続で10時57分発。姫新線はその名の通り姫路と新見を結ぶ総延長158.1kmの比較的長いローカル線だ。陰陽を結ぶ路線として1989年以前は急行列車も設定されていていたが現在では地域輸送中心の、1〜2両のディーゼルカーが行き交うだけのローカル線となってしまった。運行形態が何区間かに分かれており姫路に近い程本数が多く、本竜野までは30分間隔で列車が行き来するが末端の中国勝山〜新見は2、3時間に1本という閑散ダイヤである。
盛況だった車内も気がつけば空席が目立ち始めた。姫路から佐用へ行くには山陽線で上郡へ出て特急列車も充実している智頭急行線を利用した方が便利だろう。
左からカーブを描いて高架線が寄ってくると間もなく佐用駅。駅名の読みは「さよ」だが町名は「さよう」でややこしいがもともとは両方とも「さよ」であったとのこと。ここで津山行きに乗り換える。11時24分着で出発が41分。若干時間があるので改札を出てみた。相変わらず曇り空だが蒸し暑い。喉が渇いたと息子が言うので駅前の自動販売機でお茶を買う。ペットボトルを抱えた息子の手を引き再びホームへ戻ると十数人が津山行きの入線を待っていた。
11時41分発姫新線津山行き。思ったよりも乗客が多く、ロングシート部に座る。隣にいる初老の女性と話がはずむ。
−どこへ行くのか?−
こう聞かれる事がこの後何度かあったが答えに窮す。実家があるわけでもなし観光が目的でもなし。正直にJR全線乗車を目指して中国地方のローカル線に乗りに来ました、とでも言えば良いのだろうが果たしてそんな趣味を一般の人が理解してくれるのかと思い一瞬躊躇する。
「祖父の実家がある新見に行きます」
−新見−。母方の祖父の出身地である。母が幼少の頃他界しているので私はもちろん会ったことはないが墓はある。実際出発前に母に墓参したい旨相談したが駅から遠く、場所も説明し難いというので諦めた。墓参りが無理でも祖父が暮らした土地を息子に見せたい。
以後この様な質問があった時は必ず-新見-と答えた。
話し込んでいたらあっという間に1時間経ち終点津山駅。先ほどの女性は神戸から津山の実家へと帰る道中でいつも姫路から姫新線を利用しているそうだ。姫新線にそんな乗り方をしている人がいるとはなんだか自分のことのように嬉しい。
12時39分津山着。6分の接続で姫新線最後の列車となる新見行きに乗り換えた。姫路でおにぎりを食べたあと食事を取っていないので息子が空腹を訴え始める。津山での乗り換え時間は僅かなうえ新見まで1時間39分の道のりですぐに食べに行くことも買出しに行くことも不可能だ。こういう時のためにリュックに菓子を忍ばせている。
14時24分、終点の新見にようやく着いた。160km弱を4時間半、さすがにくたびれた。一旦改札の外へ出ることにしよう。

新見→総社→岡山→備中高梁→新見

伯備線線の115系 新見駅にて

高梁川沿いを行く伯備線

吉備線のキハ40 総社駅にて

新見駅に到着したやくも21号。車内販売はここ新見まで。
小田原から約15時間、本日の目的地、岡山県新見駅に着いた。今日の宿は此処に取ってあるがまだ時刻は14時半過ぎだ。このまま市内をブラブラして投宿しても良いが墓参も叶わぬ故、まだ列車に揺られ続けることとした。暫しの休息ののち14時48分発伯備線播州赤穂行きの客となる。山岳路線の雄、115系は姫新線のディーゼルカーとは比べ物にならぬ速さで高梁川沿いを下って行く。こんな山の中にも係わらず川幅が広い。伯備線は陰陽連絡線の中でも屈指の幹線だが新見辺りまで来るとだいぶ山深く、川沿いに線路が引かれているため川の蛇行に合わせてカーブが右へ左へと連続する。その為にこの路線を走る特急やくも号には振り子式電車が使われているほどだ。そのやくも号とすれ違うと息子がアレに乗りたいという。381系なんていつ以来だろうか?私も久し振りに乗ってみたくなった。
総社15時51分着。吉備線に乗り換える。息子も私も初めて乗る路線だ。姫新線で散々乗ったディーゼルカーだがこちらの車輌はキハ40。キハ127はなんだかレールの上を走るバスのような雰囲気で断然キハ40の方が気分が盛り上がる。
総社を出て15分、左手に石でできた大きな鳥居が見えてくると備中高松駅だ。車内からも圧倒されるほど大きい。この鳥居は岡山県下最多の初詣客で賑わう最上稲荷のものだそうだ。
16時36分終点岡山駅着。2分の時間しかないので二人で走ってホームを移動。伯備線備中高梁行きの電車に間に合った。帰宅時間帯に入ったので乗客は多く座れないが散々列車のシートに揺られてきたのでちょうど良い機会と、ドア付近に立って流れる景色を二人して眺める。案外備中高梁まで乗り通す客は多かったがそれでも途中で座席にありついた。
備中高梁駅に着くと日もかなり傾いている。夏なので日は長いがなるべくならまだ明るいうちに宿泊地の新見へ戻りたい。次の新見行き普通列車は18時52分と1時間20分も先。しかし6分後に特急やくも21号出雲市行きがやってくるのでこれに乗ることにした。18きっぷでは特急列車に乗車不可なので一旦改札を出て乗車券と特急券を買う。貰いもののオレンジカードが5000円分あり幸いにも自販機で使用できたので手持ちの現金を出すことなく購入できた。
17時40分に備中高梁を出発したやくも号はカーブの度に車体を大きく傾け速度を落とすことなく伯備線を北上する。カーブ中に通路側の座席から前方車輌をみるとその傾き加減がわかってとても面白い。息子に振り子電車の仕組みを説明するも理解できたか甚だ怪しいが堪能しているようなのでよしとしよう。
18時6分新見に戻ってきた。381系に後ろ髪を引かれる思いで下車。まだまだ外は充分明るい。改札を出たところで息子がトイレに行きたいと言い出したが改札内にしか設備はなくワケを話して出礼嬢に息子だけを入れてもらった。幼児の足す用などあっという間のはずだが戻ってこない。心配になり様子を伺うとトイレの目の前に停まっている姫新線がタイミングよく動き出しているところだ。息子はフェンスに張り付いて列車を見送っている。その姿に思わず私は苦笑いしたのであった。
新見駅からホテルまで徒歩移動。途中の弁当屋とスーパーで夕飯の買出しをしてチェックイン。しかし暑い。気温はそれなりだと思うが盆地だからなのか空気がムワっとしていて10分足らずの道のりでも汗だくになり閉口した。
寝る前に息子の傷口のガーゼを替えたが全く問題ないので一安心。息子はベッドに入るなり爆睡だが私は冷房が寒くて寝付けない(古いタイプの機械なので弱・中・強しか設定できない上にタイマーもなし)仕方なくエアコンをOFFにして窓を全開にしたが今度は蚊の襲来で目が覚める。再度冷房を入れたがそんなこんなで結局23時を回ってしまった。
特急やくも21号
本日の行程
小田原 00時31分発(ムーンライトながら)→大垣 05時55分着/06時00分発→米原 06時33分着/06時38分発(新快速)→姫路 10時00分着/10時12分発→
播磨新宮 10時47分着/10時50分発→佐用 11時24分着/11時41分発→津山 12時39分着/12時45分発→新見 14時24分着/14時48分発→総社 15時51分発→15時54分発→岡山 16時36分着/16時38分発→備中高梁 17時34分着/17時40分発(特急やくも21号)→新見18時06分着


乗車距離 921.2Km




その1 その2 その3
inserted by FC2 system